買い手企業がほしいものをアピールする
M&Aは業績が良ければ「できる」、悪ければ「できない」と思われがちですが、実際はそうではありません。もちろん、業績が良ければそれに越したことはありません。しかし業績は、実際に私が担当したM&A案件では、1番重要な要素ではないのです。
私が個人的に考える重要な要素は、
①企業としての売りがあるか
②シナジーによって自社事業が伸びていくか
の2つだと思います。
企業としての売りとは?
一般的には強みのことですが、強みってなんだ?と思いますよね。
強みとは、「競合他社より有利な部分」のことです。
貴社が売上を獲得できているのであれば、必ず競合他社より有利な部分があります。それは、製品自体、営業力、価格、従業員、顧客との信頼関係、社長の個人ネットワーク、様々です。
たとえば、製品、営業力が競合他社より有利ではないと仮定したら、おそらく貴社は顧客との信頼関係が強い、又は、従業員の質が高い、社長が営業得意といったことが考えられます。自社が受注を取れた場面を思い返すと、「そういえば、既存顧客からの受注が大半だな」とか「社長がいつも案件持ってくるな」とか気づきがあるはずです。それが有利な部分です。
話が少し脱線しましたが、買い手企業がほしいものは、その売りの部分です。
その売りで人気が高いのが、「製品自体に競合他社より有利な部分がある」、「従業員の質が高い」、「顧客との信頼関係が強い」です。その売りが明確であれば、業績は2の次で、それが売れるため、赤字会社でもM&Aができます。
しかし、その売りがあいまいだと、相手には伝わらないので、結局、業績のみをアピールするだけになってしまい、今後の業績予測を「売り」としがちですが、買い手は「業績を買う」という考えではないのです。なお、買い手企業が今が赤字だから補填したい場合はそれでM&Aできます。
シナジーで買い手企業の事業が伸びていくか
次に買い手企業が検討するのは、買い手企業の既存事業とのシナジー(相乗効果)です。このシナジーがあるかどうかを見極めるのは、事業も生き物なので、実際かなりハードルが高く、シナジー効果を図るにはかなり大変です。なので、買い手企業は、顧客を獲得できるかに注視しています。
今の日本国内は成熟しており、新たに顧客を獲得していくためのコストが多大にかかります。それならば、自社製品やサービスを売り込める顧客を持った企業をM&Aするというのは自然な流れです。
貴社既存顧客に対して買い手企業の製品やサービスが売れるという判断ができれば、M&Aができます。そうすると同業者、又は買い手企業事業の周辺サービスを展開している企業に対して「顧客」、「顧客との関係性」をアピールしていくとM&Aできます。
また、シナジーという点は薄くなるものの、新規事業としてのM&Aを検討している企業には、対象顧客とノウハウをもった従業員がほしいので、そこをアピールすることでM&Aできます。
多くのM&A仲介業者が業績に絞った提案をしておりますが、業績はもちろん重要なのですが、一番ではないということです。
買い手企業がほしいものを持っている会社であることをアピールすることで、買い手企業が検討しはじめて、次にリスクヘッジのために業績を気にしてくるという流れになりますので、当社のアドバイザリーサービスでは、貴社の一番の売り、買い手企業に貴社の既存顧客等が貢献できのかをまずは整理して進めております。